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環境エネルギーと原子力を学ぶ学生による原子力Q&A
nucqa.exblog.jp
福島第一原発の核燃料がすべてむき出しになったとして、何キロ以上離れた地点なら安全なのですか?
【ご質問】

福島原発が保有する核燃料すべてがむき出しの線源となったと想定して、距離による減衰を考慮すれば何キロ離れた地点で人体に影響がないといえる線量になるのでしょうか?自然条件など様々なパラメータによるとは思いますが、理想条件でかまいませんのでご教授ください

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【回答】

核燃料には多くの放射性物質(放射線を出す物質)が含まれています.放射性物質からは,α線,β線,γ線と呼ばれる放射線が主に放出されます.この中でα線やβ線はモノを透過する能力が低く,建物などの一般的な構造物があればその多くは遮蔽されます.また空気中を移動するだけでもある程度減衰されるため,放射性物質の位置が固定されている場合は,遠距離では問題にならないと考えられます.遠距離で一般に問題となるのは,モノを透過する能力が高いγ線です.

ただし,「核燃料すべてがむき出しの線源」となった場合にも,その線源(=放射性物質)が福島第一原発に固定されている場合には,放射線が遠距離に到達するまでには建物などの一般的な構造物を数多く透過しなければなりません.γ線は密度の大きいものを通過する場合に減衰が大きく,鉛などが遮蔽の用途に使われることが多いですが,コンクリートでもその量(厚み)が総量として十分にあれば,高い遮蔽効果が期待できます.そのため,「核燃料すべてがむき出しの線源」を考えた場合にも,例えば現状の避難区域(20km,3/21 12時現在)以上の区域に,人体に影響の出る放射線が到達することは現実的には考えにくいです.

しかし,この評価は,放射性物質の位置が固定されていることを想定したものです.実際は,ヨウ素やセシウムなどの気体になりやすい物質は,容易に拡散・飛散します.つまり,放射性物質の位置が移動することになります.結果として,福島第一原発に全ての放射性物質が集まっている場合と比べて,遠距離の地域への影響は大きくなります.現在,福島県周辺地域で確認されている放射線の多くは,拡散・飛散した放射性物質によるものと考えられます.このことは,一部農作物からヨウ素などが検出されていることからも確認できます.
そのため,実際には,福島第一にある放射性物質からの放射線よりも,飛散・拡散してきた放射性物質からの放射線の影響の方が遠距離では強いということになります.よって,このむき出しの固定された線源という想定は,放射性物質放出による現実の影響とは大きく異なる結果を与えると考えられますので,その点はご注意ください.
# by n_i_2011 | 2011-03-22 21:43 | 放射性物質の影響・被害