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環境エネルギーと原子力を学ぶ学生による原子力Q&A
nucqa.exblog.jp
放射性物質が風下方向で人体に影響の無い濃度に薄まるにはどの程度の距離が必要でしょうか?
【ご質問】

蒸気爆発や水素爆発によって放射性物質の粉塵が発生した場合、粉塵は風に乗って拡散しますよね。(海水経由は人体へ影響を及ぼすのに時間がかかりますよね?)粉塵は徐々に拡散、あるいは地面に付着して薄まって行くと思います。
風下方向で人体に影響の無い濃度に薄まるにはどの程度の距離が必要でしょうか?500kmを超えて広がる可能性もありますか?
ちょっと原子力とは関係ない範囲の質問かもしれませんが、もしわかれば教えてください。

蛇足ですが、安易な評価はするべきではないかもしれませんが、事象が発生してからでは遅いこともあるのではないでしょうか。今回の地震や津波も想定外としばしば弁明されていますが、「想定外の事が起きる可能性がある」事は想定するべきだと思います。重大な事ほど、悪い方向で評価しておくのが防災の原則と思います。
皆様は学生さんということなのでさらに蛇足を重ねますが、M9の地震や10mを超す津波は予測できていました。また、地質学的な予測なんて、まだまだ精度は低く、信頼するに足りない事もわかっていました。単に、不都合だから黙殺されてきただけです。私は地質屋ですので、そのような事態を許した事には一抹の責任を感じます。

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【回答】

放射性物質の拡散については,その種類,天候,放出の形態等に大きく依存します.それらの状況に不確実性が大きいため,現状では正確なお答えはできません.また,500 kmのように長距離になれば,評価に含まれる誤差も大きくなります.そのため,モニタリングを中心に評価が進められるものであると考えられます,

以下は他のQ&Aでもあげさせて頂いたいものですが,あくまでも推測ということでご理解ください.
評価する方法としては,SPEEDIという計算コードなどが開発されています.そちらの例題から推定値を求める事ができるかもしれません.
http://www.bousai.ne.jp/vis/torikumi/index0301.html
例えば,図形出力一覧のによると,発生地点(発電所)から7,8km離れると,100分の一の被ばく量になることが分かります.ただし,これはあくまでも推測であり,風向きや天候に大きく左右されることは,重ねてご注意をお願いします.

そのほかのご指摘もありがとうございます.「想定外のことが起きる可能性」の想定などについては,今回の事故が終息した後に,議論があると思います.
ただ,今はまだそういった時期ではないと思われますし,今回のブログの目的からも外れますので,回答は控えさせて頂きます.
by n_i_2011 | 2011-03-18 01:15 | 放射性物質の影響・被害
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